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2013.07.09

海のある街    9'8 16

 周りにはだれもいない。さっきまで邪魔だと思っていた釣り船も近くにはいない。ときおりモーターボートが行き交うが、しかしかなり距離は離れていて、立てる波に揺られることもない。
 素の自分になっているような気がした。
 そう飾りもなにもないぼく。
 海の上にポツリと浮かんでいるのはぼく自身だ。職業もへったくれもない。名前だって必要ない。ただのぼく。
 そしてそこにあるのは海だけ。
 しがらみもなにもなく、ただぼくは浮かんで、そして風に吹かれ、波に揺られている。
 湧き上がる感情も、そして感覚もなにもかもすべてが素のぼくだった。
 寂しさを感じないのはどうしてだろう?
 それはここが海だからだろうか?
 ぼくがぼくでいることの意味が、すこしだけだけど解ったような気がした。
 その感覚を身体中で感じながら、ぼくはパドルを漕いだ。
 葉山の灯台がすこし大きく見えようになってきた。
 赤い灯台。
 この前、美由紀さんといっしょに座ったベンチが小さくだけど見えた。あのときの彼女の横顔を思い出しながら、ぼくはパドルを漕ぐ。
 海を感じながら、そして風を受けながら、波に揺られて漕ぐ。
 湾の入り口まで来たら、ぼくはボードの上に立って漕ぎはじめた。さっきまで感じていた強い向かい風は収まってきたようだった。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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