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2013.07.05

海のある街    9'8 14

 進んだ分だけ、その鳥居は大きくなっていく。
 湾からかなり外へ出たからだろうか、あたりを釣り船が通るようになっていく。ちいさなボートから、乗り合いの釣り船までサイズはさまざまだ。
 そんな中をボードの上に乗ったぼくは混じっている。
 いままでに経験したことのない不思議な体験だった。
 釣り船が波を立ててぼくの横を通り過ぎる。
 横波が大きいとさすがにバランスを崩してしまうこともある。こんな沖で海へ落ちるのはあまり嬉しいことではない。バランスが大きく崩れそうになったら、とりあえずしゃがんで揺れを回避する。
 収まったらまたボードの上に立ち上がって漕ぎはじめる。
 そんなことを繰り返しているうちに鳥居はさらに大きく見えるようになってきた。もうひとりの参加者が名島の近くでボードを漕いでいるのも見えるようになってきた。
 もうすこしだ。
 ぼくは強い風に押されてボードのコントロールに苦労しながら、あたりで釣りを楽しんでいるボートを避けるようにしてようやく名島までいくことができた。
 途中どうなることかと思ったけど、こうやって着いてみると、達成感がじわりとぼくの心を満たしていく。
 名島のまわりの海はとても綺麗だった。
 逗子湾でも透きとおっているときは綺麗なんだが、透明感のレベルが違う感じだ。
 ただとても風が強くて名島を楽しむことはできなかった。ちょっと油断するとあっという間にボードが流されてしまい、岩礁にボードがぶつかりそうになってしまう。
 すぐ近くにレイさんがいた。
「いや、予想外に風が強くなっちゃって大変そうだったから船に乗ってもらおうかと思ったけど、なんとか着いたね」
 レイさんが笑顔で頷いた。
「風には参りました」
 ぼくは答えた。
「帰りはどうする? ものすごい向かい風だよ。ボートで戻ってもいいけど」
 レイさんがぼくたちふたりに尋ねた。
「せっかくだからのんびり漕いで帰ります」
 ぼくは思わずそう答えてしまった。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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