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2013.07.04

海のある街    9'8 13

「風がちょっとあるので、今日はぼくボートを出しますから、なにかあったら遠慮なくいってください。じゃ、名島で」
 レイさんはそういうとぼくたちをあっさりと送り出した。
 パドルを握って海へ入る。
 座ったまましばらく漕いて、腰のあたりの深さのところまでいくとぼくはボードの上に立った。
 確かに風が強い。背中から押されるようだ。
 オフショアの風が強いと波を押しつぶすんだが細かな波があちこちに立っていて、いつもの穏やかな逗子の海ではなかった。
 それでもパドルを漕ぐことには慣れてきたので、そんなに戸惑いはなかった。ボードにパドルをぶつけないように気をつけてぼくは漕ぎはじめた。
 もうひとりの参加者はさすがにぼくとはレベルが違って、さっさと沖へ出ていった。
 まぁ、そんなことを気にすることはない。
 ぼくはマイペースでいくことにして、ゆっくりとしかし確実にパドルを漕いでいく。
 葉山の赤い灯台が近づいてくる。
 ゆっくりと方向転換をして浜の方を見てみると、逗子の海岸線は遙か彼方だ。
 いままで何度かスクールで沖へ出たけど、この灯台より先にいったことはまだなかった。
 小刻みに揺れるボード。ぼくの背中を押す強めの風。
 なんだかぼくはそれに翻弄されるように揺れながらヨタヨタといった感じでさらに沖へ出ていった。
 葉山の灯台を過ぎると、波の様子が変わった。
 湾から外へ出たからだろう。小刻みだった波がすこし大きくなっていく。揺れ方もそれまでの細かな揺れから、ゆったりと大きな揺れへと変わっていく。ときには揺り返しもあったりして、その揺れにぼくはすこし途惑ってしまった。
 さらに風が勢いを増したようで、ぼくの背中を押すだけでなく弄ばれているような感じすらするほどだった。
 パドルを漕ぐ腕に力が入る。
 穏やかな海なら、もっとスムーズに進んだのかもしれないが、波と風のおかげで普段よりも力をいれて漕がなければ思ったように進んでくれない。
 そんな状態にもかかわらず、先の方に名島の鳥居が見えてきた。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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