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2013.06.12

海のある街    TSUNAMI 23

「そうか、自由なんだね、人って」
 美由紀さんはその手に持ったビールの缶をじっと見ながらいった。
「そう、自分で決めればいいんだよ」
「もしかして、だから美味しいのかな、このビール」
「かもしれない」
 ぼくたちはそういって頷き合うとビールを飲んだ。
「わたしもじっと縮こまったままでいたのかな……」
 彼女は海を眺めながらポツリといった。
「だからときおり苦しくなってしまうのかもしれない。心の穴を作っているのはわたし自身なのかもしれない……」
 ぼくは彼女の横顔を見た。すこしだけ淋しそうだった。
「大きく息を吐いてもいいんだと思うよ」
 ぼくはいった。
「そうだね、そうだよ」
 彼女は頷きながら答えた。
「ビールは美味しく飲まなきゃ」
 彼女はそういって缶ビールに口をつけた。
「うん、美味しい」
 彼女は微笑んだ。
 彼女の心の穴の存在はきっと消えることはないんだろう。そして、その穴の存在が彼女の中でどれほどの重さを持つのか、ぼくには理解することはできないだろう。想像することはできても、きっと解らない。
 でも、いまの美由紀さんは昨日までの彼女とはすこしだけ違っているはずだ。
 それだけは確信できた。
 ぼくたちはそうやって海を見ながら、いろいろな話を続けた。
 やがて時間が経つにつれ、風がすこしずつ強くなっていった。
 もうしばらくすると陽の輝きの色が変わりはじめるだろう。まだ夕方というには早い時間だったが、すこしずつ陽に黄金色が加わっていく。海の照り返しもまぶしさは変わらなかったが、絵の具の色を足していくようにその色調がゆっくりと変化していった。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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