« 海のある街    TSUNAMI 21 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 23 »

2013.06.11

海のある街    TSUNAMI 22

 ぼくは起き上がると、さっきコンビニで買ってきた缶ビールを袋から取り出した。
「飲む?」
 彼女に聞くと、彼女も起き出して頷いた。
 プルトップを開けるとそのまま彼女に渡して、ぼくはもう一本缶ビールを開けた。
 缶を軽くぶつけて乾杯をすると、ひと口飲んだ。冷たい苦みがゆっくりと喉を通りすぎていく。
「初体験。海見ながら昼間から飲むビールってこんなに美味しいんだ」
 彼女は楽しそうにいった。
「そうだよ」
 ぼくは缶を持ったまま答えた。
「もしかして休みの日はいつもこうしてるの?」
 彼女が訊いた。
「いつもってわけじゃないけど、天気のいい日はなるべくそうしたいと思ってるよ」
「そうか、だからここに住んでるの?」
「というか、ちょっと順序は逆かもしれない」
 ぼくはすこしだけ考えてからいった。
「どういうこと?」
「逗子に住むようになって、こういう楽しみ方があるんだと気がついたんだ。浜辺にシートを広げて、こうやってのんびりと海を見ながらビールを飲んで過ごす生き方もあるんだよと」
 ぼくは彼女の顔を見ていった。
「うん」
「それまでのぼくはね、きっと常識とか世間体とかそういったものに雁字搦めになっていたような気がするんだ」
「どういうことなの?」
 美由紀さんは膝を抱えるように座り直すといった。
「逗子に住む前のぼくなら、海開きする前の海岸へ来て、水着で泳ごうなんて思わなかったはずなんだ。さぁ、海で遊ぶための用意ができましたよ、とだれかにいってもらわないと、海で遊ぼうとは思わなかったかもしれないんだ」
 ぼくはひと言ひと言考えながら話した。
「それが変わったのね」
「そう、ここに住んで、そしてこの景色をごく普通の景色として見ることができるようになって、やりたいようにやればいいじゃないかと素直に思えるようになっんだよ。泳ぎたくなったら、いつでもいいから泳げばいい。事実、冬でもウェット着て泳いでいる人もいるしね。自由に生きていいんだよと、この景色に教えられた気がする」
 ぼくはそういって頷くとビールを飲んだ。


※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

|

« 海のある街    TSUNAMI 21 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 23 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/476084/51994667

この記事へのトラックバック一覧です: 海のある街    TSUNAMI 22:

« 海のある街    TSUNAMI 21 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 23 »