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2013.06.07

海のある街    TSUNAMI 20

 防波堤をどんどん歩いていくと、海の色の濃さがわかる。防波堤に寄せる波は逗子海岸で見ていたときとは違ってやや荒めだ。海からの風も感じる。
 赤い葉山灯台のところまで歩くとそこから防波堤の一番先までいき、美由紀さんは海をのぞき込んだ。
「ねぇ、魚」
 濃い碧い海の中をすこし大きな魚影が固まって泳いでいるのが見えた。
「ここにいるとまるで船の舳先にいるみたいだね。波が次から次へと寄せるから、進んでいるみたいに感じる」
「確かに、そうだね」
 ぼくは笑顔で返事をした。
 ぼくにとっては見馴れた景色だったけど、彼女にしてみればはじめて観る景色だ。とても新鮮に映るんだろう。
 灯台のまわりをぐるりと周りながら、彼女はあちこちの海を観ていた。
「すごいよ。ごめん、あまりにもいい景色だから、すごいとしかいえない」
 彼女は笑いながらいった。
「座らないか?」
 ぼくは彼女にそういって近くのベンチに腰を下ろした。その向こうには太平洋が広がっていた。しばらくそうやって海からの緩やかな風を浴びながら、ぼくたちはただ海を観ていた。
「海っていいね。なんだか心の中のモヤモヤが綺麗になくなっていくみたい」
 彼女はぼくの顔を見ていった。
「うん。あとは波の音かな。ゆったりとしたリズムが伝わってきて、とても豊かな気持ちにさせてくれるんだ」
 ぼくも彼女の顔を見ていった。
「でも、ほんとうにすごい」
 彼女は頷きながらいった。
 そろそろお昼時だった。ぼくたちはいったん逗子の海岸に戻り砂浜をすこし歩いて、黒門の駐車場を越えたところにある地下道をくぐった。階段を登っていくとちょうど食事のできる店の前に出る。
「ここはCANTINA。ビザやパスタが食べられる。向こうはくら。ハンバーグのお店。どっちがいい?」
「今日はピザかな」
 彼女がそういうので、ぼくたちはそのままCANTINAに入った。海の見える席に座るとランチのセットを頼んだ。ピザにサラダ、飲み物のセットだ。国道を挟んでいるから、海の真ん前というわけにはいかないけど、それでも充分に潮の香りを感じる景色が楽しめる。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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