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2013.06.06

海のある街    TSUNAMI 19

「子どもの頃、海へ連れていってもらったことを思い出した。よく家族で海にいったと思う。瀬戸内海だから景色は違うけど、なんだかその頃のことをいっぱい思い出しちゃった」
「うん」
「そういえばもうずいぶん家にも帰っていないんだ。なんとなく帰りづらくて」
 そういう彼女の顔にはなにか吹っ切れたような明るさがあった。
「一回、帰ろうかなぁ」
「そうするといい。お兄さんたちと一緒に帰省すれば?」
「そうか、お兄ちゃんたちとね。それはグッドアイディアかも」
 彼女はそういうと微笑んだ。陽射しを浴びたその笑顔は輝いて見えた。
「あそこはなんなの?」
 そういって今度は葉山港の灯台を指さした。
「葉山港の灯台だよ」
「遠い?」
「ちょっとだけ離れてるけど、歩いていけるよ。いきたい?」
「うん」
 ぼくたちは太陽の季節の碑のところにある階段を登って国道沿いの歩道に出ると、そのまま渚橋を渡った。交差点を右に曲がってバス通り沿いに歩く。
 なぎさ橋珈琲を過ぎたあたりはすこし狭くなっているので並んで歩けなかったが、その先にはまた歩道が設けられていた。
 やがて葉山町の看板が見えてくる。
「ここから葉山なの?」
「そうだよ、葉山。ここは鐙摺海岸」
 鐙摺を回り込むようにして右に折れると、そのまま海沿いの道を歩いて葉山港の入り口へ向かった。葉山港駐車場へと入っていく。この右側は葉山港。漁を終えた漁船が並んでいる。
 そしてその左側は葉山マリーナだ。クルーザーやヨットが碇泊はもちろん陸上艇置できるようになっている。
 しばらく歩いていくと広いスペースの駐車場へと出る。その先に防波堤があった。駐車場を横切って防波堤のところへいくと、ゲートを通り抜け、階段を登っていった。
 階段を登り切ったところで彼女は思わず声を上げた。
 彼女は帽子を左手で押さえると、しばらくそこに立ったまま海を見つめていた。
 遙か彼方までが一望できる。太平洋の水平線が見えた。陽射しとともに海からの照り返しがとても眩しい。
「ほら、あそこに灯台があるよ」
「うん」
 彼女はぼくが示した方向を見ると、すこし足早に歩きはじめた。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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