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2013.06.05

海のある街    TSUNAMI 18

「もう水着の人がいるよ」
 彼女が不思議そうに尋ねた。
「ゴールデンウィークの頃から海で遊ぶ人が増えるんだ。ここに来る人たちは半分夏気分だね。池子に米軍住宅もあるし、横須賀にも基地があるから米軍の人たちも多くて、彼らはもうこの時期から水着姿だよ」
「確かにアメリカ人もいるねぇ。日本の海岸じゃないみたい」
 彼女はそういうと楽しそうに微笑んだ。
 やがて中央口まで来るとぼくたちはさらにそのまま歩き続けた。
 海からの緩やかな風は暖かかった。陽射しはまるで夏を思わせるような強さになっていた。ゆっくりと歩くだけでも汗ばんでくるほど気温も上がりはじめてきたようだ。
「手を繋いでもいい?」
「いいよ」
 ぼくが頷くと彼女はぼくの右手をそっと握った。
 のんびりと歩く。
「ねぇ、あれってもしかして?」
 黒門の駐車場のあたりまで来たとき、彼女がとつぜん聞いてきた。
「ああ、江の島だよ。いままで隠れて見えてなかっただけ。空気が澄んでいるときには、江の島の後ろに富士山が見えるんだ。今日は残念だけど、見えないね」
「ほんとう? すごい」
 彼女は嬉しそうにいった。
 やがてぼくたちは東浜の入口のあたりまで歩いた。
「いつもこんなに潮が引いてるの?」
「いや、今日は特別だよ。遠浅は遠浅なんだけどここまで引くことはあまりないね」
「海の方にいってもいい?」
「靴が濡れても平気なら大丈夫だよ」
「うん、今日だけだからいいよね」
 そういうと彼女はぼくの手を離してまだすこし水が残っているあたりを歩きはじめた。歩いたところに彼女のサンダルの跡がついていく。
 ぼくは革靴を履いていたからそこまでいかず、彼女の姿を立ったまま見ていた。
 しばらくすると彼女は戻ってきた。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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