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2013.06.20

海のある街    9'8 5

 リーシュコードを右足首に巻いて、というか、はじめての体験なので、どっちが利き足なのかよく判らなかったけど、どうやら地面を掘るときにシャベルに乗せる足が利き足らしく、右利きなら普通は右足ということになる。
 ボードを持ってそのまま海へと入っていく。
 すぐにボードを浮かべると、まずはその真ん中に正座して座る。
 いきなり立って漕ぐわけにはいかない。パドルの操作がちゃんとできるかどうか試す必要があるからだ。真ん中に座ったまま、パドルを使って、進んでみる。五、六メートルほど進んだところで方向転換だ。
 そのまま浜の方へ戻る。波打ち際のすぐ手前まで来たら、また方向転換して海へと進んでいく。
 二、三度繰り返したところでボードの上に立つことになった。
「ボードは押さえているので立ってみてください」
 レイさんにそういわれてよろよろと立ってみた。
 思っていた以上に揺れる。それもとても細かい揺れだ。
 すぐにしゃがみ込みたくなる気持ちを抑えて、とにかくパドルで漕いでみる。
 ボードがすこし進む。でも、左右の揺れは進むとさらに大きくなる。
 膝の部分がなんとなく頼りない感じで小刻みに震えているのがわかる。
 でも、このまましゃがむわけにはいかない。
 やせ我慢しながら沖の方へと漕いでいく。ふと横を見てみると遊泳エリアを区切っているブイを通り過ぎていた。
 こんなところまで泳いできたことはない。当然、海底は遙か下だ。
──どれぐらいの深さだろう?──
 そう思って、ふと下を見た瞬間にバランスを崩してボードから落ちてしまった。
 パドルはしっかりと握ったまま、海面から顔を出す。
 ちょっと向こうにボードが浮いていた。
 ぼくは顔を上げたまま平泳ぎでボードに近づくと、ボードに上半身を預けるようにして乗り、座ったまま態勢を整えた。
 浜の方を確認してみるとかなり遠くまで来てしまっていることが判った。
 まだ慣れていないときに、視線を近くにやるとバランスを崩しやすい。それはバイクに乗っているときに身につけた知識だった。
 なるべく遠くを見ること。
 バイクの実技試験の一本橋を渡るときのコツだ。それと同じことがいえる。
 ぼくはボードの上に手をついて、そのまま立ち上がった。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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