海のある街 TSUNAMI 7
「そっちはどうなの?」
今度は彼女が尋ねてきた。
「連れだって飲んで帰る人もいるみたいだけど、ぼくはまっすぐ帰るだけだね」
枝豆をつまみながらぼくは答えた。
「じゃ、今日は特別?」
「だって、あの店で知っている人に会うなんて思いもしなかったもの」
ぼくは笑った。
「確かに、ちょっとびっくりした」
彼女は微笑んだ。
「うん」
ぼくはジョッキに手を伸ばす。
「爪、短くカットしてるんだね」
ジョッキに伸ばした左手を見て、彼女がいった。
「あ、ギター弾いてるから」
「ギター? どんな曲弾くの?」
彼女が興味深げに訊いてきた。
「たぶん知らないと思うよ。だってふた昔ぐらい歳が離れてるもの」
ぼくは答えた。
「え、ふた昔……。ほんとう?」
「たぶん」
ぼくは頷いた。
「ねぇ、どんな曲」
「ジェームス・テイラーが好きなんだ」
ぼくの言葉を聞いてしばらく彼女は考えていたが、やがてぽつりと答えた。
「知らない……」
「ほら、ふた昔だもの」
「他には?」
「ビートルズは、ぼくの中では神様的存在なんだ」
ぼくはジョッキのビールを飲み干すと答えた。
「ビートルズなら知ってる。教科書にも載ってたし」
「なんだってね。ぼくらがビートルズを聴いていた頃は不良扱いだったよ。ロックのミュージシャンたちは。だから教科書に載ってるなんてとても信じられないな。タイガースってグループサウンズのバンドは長髪が理由で紅白歌合戦に出られなかった時代だもの」
「そうか、ふた昔だね」
ぼくらは顔を見合わせて笑った。
※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。
今度は彼女が尋ねてきた。
「連れだって飲んで帰る人もいるみたいだけど、ぼくはまっすぐ帰るだけだね」
枝豆をつまみながらぼくは答えた。
「じゃ、今日は特別?」
「だって、あの店で知っている人に会うなんて思いもしなかったもの」
ぼくは笑った。
「確かに、ちょっとびっくりした」
彼女は微笑んだ。
「うん」
ぼくはジョッキに手を伸ばす。
「爪、短くカットしてるんだね」
ジョッキに伸ばした左手を見て、彼女がいった。
「あ、ギター弾いてるから」
「ギター? どんな曲弾くの?」
彼女が興味深げに訊いてきた。
「たぶん知らないと思うよ。だってふた昔ぐらい歳が離れてるもの」
ぼくは答えた。
「え、ふた昔……。ほんとう?」
「たぶん」
ぼくは頷いた。
「ねぇ、どんな曲」
「ジェームス・テイラーが好きなんだ」
ぼくの言葉を聞いてしばらく彼女は考えていたが、やがてぽつりと答えた。
「知らない……」
「ほら、ふた昔だもの」
「他には?」
「ビートルズは、ぼくの中では神様的存在なんだ」
ぼくはジョッキのビールを飲み干すと答えた。
「ビートルズなら知ってる。教科書にも載ってたし」
「なんだってね。ぼくらがビートルズを聴いていた頃は不良扱いだったよ。ロックのミュージシャンたちは。だから教科書に載ってるなんてとても信じられないな。タイガースってグループサウンズのバンドは長髪が理由で紅白歌合戦に出られなかった時代だもの」
「そうか、ふた昔だね」
ぼくらは顔を見合わせて笑った。
※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。
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