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2013.05.20

海のある街    TSUNAMI 6

「いつもあの店で?」
 美由紀さんが訊いた。
「ええ、珈琲豆を挽いてもらってるんだ。美由紀さんは?」
「わたしはたまに紅茶なんかを買いにいくの。ときどき、水出し珈琲とか思ってもみないものがあったりして、それで気が向いたらいくようにしてるの」
 ぼくらはなんとなく連れだって私鉄の駅へ向かって歩きはじめていた。
「偶然ついでにお茶でもどう。それともなにか用事でも?」
 ぼくはなにげなく誘ってみた。
「別に用事もないし。でも、この時間だったらお茶よりもビールじゃない?」
 美由紀さんは気さくに答えた。
「じゃどこかで一杯やろうか?」
「うん」
 同じフロアで仕事をしているといってもスタッフ同士がとくに協力をしないとできない仕事ではなかった。けれど、ぼくも働きはじめて六ヶ月になる。ふだん顔を合わせていると、なんとなく会話を交わすようになり、ときにはちょっとした世間話をするようにもなる。
 彼女ともそんな間柄だった。
 会社と家の往復しかしていなかったぼくはどんな店があるのかもわからず、結局、チェーン店の居酒屋に入ることにした。
 生ビールの中ジョッキと焼き鳥の盛り合わせや枝豆、冷や奴といったごくあたり前のつまみを頼んでぼくらは乾杯した。
「おつかれさまでした」
 グラスを合わせると、ぼくはビールをひと口飲んだ。
 冷たい苦みの利いたビールが喉に心地いい。
「うん、おいしい」
 美由紀さんが納得したように頷いた。軽くウェーブのかかった髪が肩のあたりで揺れている。
「こういうところにはよく来るの?」
 ぼくは尋ねた。
「会社の人と?」
「そう」
「あまりそういう付き合いはしてないかも。みんなシフトによって時間が違ったり、主婦の人たちも多いから、まっすぐ帰ることが多いよ」
 彼女が答えた。
「そうなんだ」

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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