« 海のある街    TSUNAMI 2 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 4 »

2013.05.15

海のある街    TSUNAMI 3

 会社を作ることになり社長を務め、クライアントとの関係もあって、フリーに転身して、その会社の社員になったり、またフリーに戻ったり。波瀾万丈という単語があるが、その見本のようなものだ。しかもほとんど単独航海のようなもので、しかも乗っている船はせいぜいが大型のヨットクラス。
 静まりかえった海の航海にしたって、けっして楽なものではなかった。
 業界も大きく変わっていく。
 やがてコピーライターではなく、ゲームの企画をやったり、Web サイトの構築をしたり、できることはなんでもやらなければいけなくなった。
 そしてある日、仕事がなくなったことに気がついた。
 コピーライターになったとき、ぼくに発注をしてくれていたのは、あたり前だがぼくよりも歳上の人だった。それがやがて同年代の人から仕事をもらうようになり、さらに発注する側の人間がぼくよりも若くなっていき、気がついたらお互いが理解できる年代を超えてしまっていた。
 そうなるとなにもぼくに発注する必要はなくなる。
 大家なら別だが、広告の業界でも、あるいはゲームの業界でもぼくはどちらかというと片隅でただひっそりと自ら舵を切って生き延びてきただけの存在でしかなかった。
 そして妻と別れて、文字通りひとりぼっちになったぼくは、以前の真っ暗な闇の中を手探り歩こうとしているときに戻ってしまったようだ。
 ただ違うのは鬱屈していないということだけだった。
 もちろん仕事がなくなっていく恐怖を忘れてはいない。心に刻み込まれたといってもいいだろう。けれど、まだ大学を出たときには、目の前にどれぐらいの未来が待っているのか判らなかった故の鬱屈があった。
 が、いまは残された時間はだいたい想像ができる。
 それに、ここまですべてを失ってみると、ほんとうに自分が欲しているものはなんなのかが理解できている。
 真夜中の海の中のような暗闇にいても、不安に襲われることこそあれ、絶望もしていないし、また屈折したなにかを抱えているわけでもない。
 淡々と生きて、やりたいことをやって、そして死んでいく。
 ただそれだけだ。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

|

« 海のある街    TSUNAMI 2 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 4 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/476084/51634273

この記事へのトラックバック一覧です: 海のある街    TSUNAMI 3:

« 海のある街    TSUNAMI 2 | トップページ | 海のある街    TSUNAMI 4 »