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2013.05.09

海のある街    風の街 14

 いつかはMartinが欲しい。
 そういえば昔、そう思っていたことがあった。
 そんなことを思い出しながら、しばらくコードをいくつか弾いていた。そのうち、ちゃんとした曲が弾きたくなったけど、コード進行なんかはもうほとんど忘れている。
 TAB譜をまとめた本を買ってもいいんだが、いまそれを売っているはず楽器店から戻ってきたばかりだ。また、買いにいくのもさすがに面倒だ。
──そうか、こういうときのためのネットだよ。
 ぼくは試しにネットで検索をしてみた。するといろいろな曲のTABが公開されていることが判った。
 そのTAB譜の中から、ぼくは「The Sage」という曲を選んだ。
 Emerson, Lake & Palmerというバンドが1971年に発表した「展覧会の絵」というライブアルバムの中の一曲だ。このアルバムはムソルグスキーが作曲した曲をメインに、他の楽曲をアレンジしたものやオリジナル曲が混ざって構成されている。
 The Sageはメンバーのひとり、Greg Lakeが作曲したとても美しい曲だ。このアルバムに収録されている他の曲は、シンセサイザーを中心にしたロックになっているが、この曲だけはアコースティックギター一本で、彼自身がその澄んだ声で歌っている。とても印象的な曲だった。
 大学の頃、雑誌に載っていたTAB譜で弾いていたけど、もうすっかり忘れてしまっている。ぼくはネットで見つけたTAB譜を頼りにすこしずつすこしずつ思い出しながら弾きはじめた。
 歌の部分はそんなに複雑ではなかったけど、間奏の部分は指の運びがむずかしい。
 もちろんすぐに弾けるようになるとは思わなかった。
 譜を見なくてもなんとか弾けるようになるまでに一週間はかかっただろうか。曲をいくつかのパートに分けて、集中して練習もしてみた。こうやって細かな部分をすこつずつ完成させて、あとで全体をまとめるというやり方はいままでのぼくにはできなかったことだ。
 不思議なものでいつの間にかこういった習慣もすこしずつ変化していることに気づかされる。
 新しい自分の発見。
 そんなに大袈裟な言葉でいうことではないかもしれないけど、確かにそのとおりなのだ。いままでのぼくなら全体を一気に構築していく方法でできなければ、それはそのまま放置していただろう。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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