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2013.05.08

海のある街    風の街 13

 年が改まって、はじめたことがある。
 いや、新しくはじめたわけじゃないな。昔やっていたことをふたたび再開したといった方がいいかもしれない。
 リビングとして使っている部屋の隅に置いてあったギターケースから、ギターを引っ張り出したのだ。
 日吉に住んでいたときにはときどきに手にしていたけど、1弦が切れてしまってそのままにしていたギター。大学の頃に買ったものでそんなに高価なものではない。それでも中学の終わり頃からギターを弾きはじめたぼくにとって、そのギターは大切なギターであったことは確かだ。
 友だちとアマチュアバンドを組んでステージで唄ったこともある。
 どうしても捨てられない本があったように、やはり捨てられないもののひとつだった。そのギターを眺めているうちに新しい弦を張ってやろうと思い立った。
 ぼくは横浜の楽器店へいくと、Martinの弦を買った。
 下宿住まいの大学生にとっては高価な部類のものだったので、よほどのことがないと買うことはなかったMartinの弦。いまは安価で手に入るようになっていた。これはぼくにとってはちょっとした驚きだったけど。
 とんぼ返りのような格好で家に戻ると、すぐに弦を張り替えた。
 Martin Marquisのエクストラライトゲージだ。Phosphor Bronze弦で、ボールエンドの部分がシルクでていねいにラップされている。
 弦を張り替えると、すぐに音叉を使ってチューニングをした。
 久しぶりだったからか音叉の音をきちん拾えない。それでも何度か音を合わせていくうちに、5弦のAの音を440Hzに合わせることができた。
 久しぶりに弾くギター。もう五年ぐらいは触っていなかったかもしれない。
 そのためかコードがきちんと押さえられなかった。
 それでも久しぶりにギターから響いてくるMartinの弦の音は素敵だった。華やかできらびやかな響きが伝わってくる。Martinのギターを手にしてその響きを聴いたわけではないけど、きっとこれと同じような音を聴くことができるんだろう。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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