海のある街 風の街 7
引っ越し屋のちいさなトラック一台で済んでしまった。引っ越しとはいっても逗子駅の西側から東側へと移動するだけだ。距離にして二キロあるかないか。
ダイニングキッチンに冷蔵庫とテーブルを、続きの洋室にはソファとデスクを置くことにした。和室にはカーペットを敷いて整理ダンスを置いた。ここに布団を敷いて寝ることになる。
あっけなく引っ越しが終わると、ダイニングテーブルに腰掛けてぼくはぼんやりと部屋の中を見た。
ゆっくりと陽が沈みかけている。その残照が窓から零れてくる。
近くのコンビニで買ってきたお茶の入ったペットボトルを飲むと、ひとつ溜息をついた。
その音はちいさく部屋の中に響いた。
その翌日のほとんどを部屋の整理に費やした。引っ越しは簡単に終わったとはいえ、それはただモノを移動させただけで、家の中をきちんと生活しやすいように片付けたわけではない。
住む場所が変われば必要になるものも出てくる。
午前中をネット環境の構築に費やした。昨日の夕方、回線の工事は終わっていたがインターネットを利用するための設定がまだだった。
インターネットを利用するようなってもう十六年ほど経つ。どこへいってもまずネットの接続がぼくの場合は大切なことだった。そのあとデスク周りの整理をしているうちにいつの間にか昼になってしまった。
午後は衣類と台所の整理だ。衣装持ちでもないし、食器の類は大量に処分したおかげでほどなく終わった。
まだ陽が傾く前の時間帯。
ぼくは海へいくことにした。
引っ越す前は逗子開成の脇の道を通って西浜へと出ていた。家から海岸まで十分ちょっとの距離だった。
今度は東浜へといくことになる。
iPhone で地図を確認してからぼくは家を出た。
※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。
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