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2013.04.04

海のある街    ペーパーフィルター 4

 皿の上に乗ったカップがテーブルに置かれる。
「苦いだけなのがいいんだろ」
「うん」
 ぼくはそう答えて、ひと口珈琲を含んだ。コクのある苦みだけが口の中に広がった。酸味はまったくといっていいほど感じられなかった。
「いいよ、これ。美味しい」
「苦いだけだろ」
 マスターは笑いながら答えた。
「なんの豆なの?」
「これか? インド・マイソールとマンデリンをメインにブレンドしてみた。こんな泥みたいな珈琲が好きなのはお前だけだよ」
 そういいながらマスターは水の入ったグラスに氷を入れ直した。舌に残った味を綺麗に洗い流すには氷水が最適らしい。飲み物に対してはどこまでもこだわりがある。
 その日からマスターはぼくのためだけに、ただ苦いだけの泥水のような珈琲を淹れてくれるようになった。

※この物語は、私小説と与太話の中間のようなものだと思ってもらいたい。
 実在の人物や、実在のお店などが出てきても、あくまでもフィクションです。

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