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2007.12.14

過剰と破壊の経済学

過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 42)  今年の 70 冊目。池田信夫「過剰と破壊の経済学」読了。
 ムーアの法則をキーとして世界の未来図がどうなっていくのかを書いている。本人の博士論文をベースにやさしく解説しているそうだ。確かに、とても読みやすくまたわかりやすい一冊だった。
 キーポイントになっているムーアの法則は「半導体の集積度は、18 ヶ月で 2 倍になる」というもの。その端的な例を挙げると、1971 年に開発された Intel の「4004」は 2200 トランジスタだったが、2002 年の「アイテニアム 2」では 2 億 2000 万トランジスタになっている。約 31 年で 10 万倍になっているということだ。

 集積度が上がるとどうなるのか簡単にいうと情報を処理するコストが滅茶苦茶下がる。コストという点で見ると、事実この 40 年ほどで 1 億分の一になっているそうだ。池田信夫が自身の blog でもよく考察する上で必ず念頭においているのがコストの意識である。当たり前だが経済的な観点が抜け落ちていると、これから世界がどう動いていくのか正確に予想することはできなくなっていく。
 ムーアの法則のおかげで情報を処理するコストが今後も下がっていくだろう。そこでボトムネックになるのが人的リソースの処理能力である。それを見据えてこの先を考えていかなければいけない。このあたりの意識を常に持つ大切さをこの本は教えてくれる。
 また、このイノベーションが引き起こすパラダイムシフトもきちんと考えないといけない。考えてみれば世の中の仕組みはがっちり固定されているものとわたしなんかはよく勘違いしてしまうのだがそんなことはあり得ない。常になにか変化が起こっていて、その変化の大きさに差はあっても、変化がなくなることなど絶対にないのだ。常にどこかでパラダイムシフトが起こっていると想定してこの先を考えていく必要があるだろう。

 あとひとつ。日本の護送船団方式というか、産業政策というお題目で省庁が音頭を取り大企業の責任者を集めて「肝いり」の方針を決めることがよくある。日本の国際競争力を官民一体で、みたいなやつのことだ。池田信夫の主張のひとつに、こういった方針がいかに駄目な結果しか生まないかということがある。なにをしているのかというとパラダイス鎖国を誘発しているだけなのだ。ばらまきだとか官民一体と、政府の主導といったやり方ではなく、純粋にきちんとした競争原理で争わなければ日本全体がただ貧乏になっていくだけだという。国が国際競争力なんてことを心配しなくても、企業はこれから真の意味でのグローバル化を果たしていかなければただ潰えていくだけなのはわかりきっているはずだ。だから訳のわからない規制だとか官庁主導なんてバカなことはただちに止めて、オープンで自主的な競争意欲を醸成するようにするべきだとわたしも思う。
 でもそういう見方をすると、日本っていうのはどこまでいっても村社会でしかなく、いまは国全体が大きなひとつの村としてしか動けていないと絶望的にすら思えてしまう。

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過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 42) (アスキー新書 42)を読む。ネットイナゴをきちんと一蹴する→池田信夫氏の最新刊。キーワードは「解放せよ」。 [続きを読む]

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